笑み社がブログを立ち上げたようです

2ちゃんねるのVIPでSSコテとして活動中の笑み社 ◆myeDGGRPNQのブログです。基本的に作品保管庫として機能していますが一日一回日記を書きます。

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唯「中学生のころの話しようよ!」紬「じゃあ、まずは私からね」

1 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 17:16:29.39 ID:9JmRM1Qu0 ?2BP(2050)

 ――私は お人形だった

 誰かの思うままに生きて

 誰かの思うままに過ごして

 なにも 考えない

 なにも できない

 毎日が同じペースで進む

 時計の針は あんなにもしっかりと動いているのに

 私は なにも変わらなかった

 檻の中の鳥

 子供の遊び道具の お人形

 琴吹紬(わたし)という存在は 抵抗もせずに 生きていた

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 17:17:02.05 ID:Xi5ZQPpv0
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 ─-ミ |: : : : .    ト 、       \ i    : |  |              ┗━━┛┗┛    ┗┛┗━━┛┗┛

3 :綾部あや ◆AYAYOvpoRs :2009/12/17(木) 17:17:10.64 ID:1cEWaSYx0 ?PLT(56065)

律「へー。じゃあ次、唯なー」

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 17:24:18.42 ID:xQEr7M2cO
んん…を見習え 糞コテ

5 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 17:26:01.63 ID:C7I1QyDf0 ?2BP(2050)

「あのさあのさ! たまにはお話しようよ!」

 冬という季節が深くなり、外では木枯らしが吹く。
 今日の気温は最高温度が4℃で最低温度はマイナスにもなるという日。平沢唯はとつぜん、
そんなことを言い出した。

「いつもしてるじゃないですか」

「そうだな。してるな」

 確かにそうだ。
 会話なら毎日している。部活の時間と行っても殆どがティータイムなのだから、私たちが
改まって話をするコトなんてない筈だ。

「ぶー! ちがうもん! 昔の話だよ。みんなはどんな中学生だったのかなあって」

「……そういえば、その話はしてなかったな。毎回律が大暴れして」

6 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 17:27:42.05 ID:C7I1QyDf0 ?2BP(2050)

「中学の時の話はしたくないんだ! 私は――今に生きる女だからな」

 律はモミアゲをいじりながら遠い目をする。
 そういえば律は過去の話をしない。一度だけ澪の恥ずかしがりエピソードを聞いたことが
あるが、自分のことは話さないのだ。

「ねえムギちゃん! いいよね?」

 唯が唐突に私に話の矛先を向ける。
 ――にこり、と笑って首を縦に振る。
 刹那、唯の顔が一気にほころぶ。それはまるで太陽のような笑顔だ。

「私の話、聞きたい?」

 椅子に座る4人は一様に私の目をみる。
 ……ああ、なるほど。私こそ、自分のことを話していない。
 必要がない。
 というよりも、厭なのだ。
 私がお人形だったころの話は――できれば誰にも話したくなんてないのだから。

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 17:28:14.75 ID:swb7Fk0NO
大抵出だしで滑ってるよな
中学生が必死こいて考えて「ふかい」と思ってそうな駄文だ

8 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 17:33:29.39 ID:C7I1QyDf0 ?2BP(2050)

「私の話なんてつまらないわよ?」

「そんなことありません! ムギ先輩の話って、聞いててほわほわします!」

「梓の表現は言い得て妙だな。確かにムギの話は面白いな」

「痛い話もしないからだろ? 澪ちゅあん」

 ガツン、と一撃が律の脳天に振るわれる。
 これを見る度に痛そうだとは思うが、それは違う。澪の鉄槌が痛いのではなくて、律の石頭
が奏でる音が、痛そう、という感想を生むのだ。
 実際、私は暴力を振るわれたことなんて一度もない。
 振るわれる機会がなかったからだ。
 私の前には誰もいなかった。
 私に、本気で接してくれる人がいなかったのだ。

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 17:35:21.44 ID:OmCd8+1OO
笑みしゃかわいいよ笑みしゃ支援

10 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 17:35:43.45 ID:C7I1QyDf0 ?2BP(2050)

「ムギちゃん……。ごめんね」

「え? どうして?」

「なんか、話しにくそうだったから……。私、余計なこと言っちゃったね」

 ――違う。
 余計なのは、自分だ。
 つまらない理由で、壁を作る自分が悪いのだ。
 変わらない。あの時から――

「――いいえ。私、話すわ。みんなに、私の過去を」

 だから、変わるように。
 憧れていたあの形に――。

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 17:39:56.67 ID:UFyMJw0K0
ふむふむ

12 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 17:41:28.87 ID:C7I1QyDf0 ?2BP(2050)

 私こと『琴吹紬』は、言ってしまえばお嬢様だった。
 国内でも有数の大財閥である琴吹グループ。その嫡子なのだから、子供のころから
一般の家庭と自分の家庭が違うことには、なんとなく気が付いていた。
 幼稚園や小学校。それらの教育機関が、私を否応なしにそれを知らしめた。
 
「つむぎちゃんは、どうしてパパやママが来ないの?」

 幼稚園の頃。友達にそんなことを言われた。
 授業参観、合唱祭、運動会、送り迎え。
 決して父も母も来てはくれない。来るのは、私を警備する人たちだけ。大きな大人と
一緒にではなく、それはただ単に力をはびらせているだけに過ぎない。
 ふつうの子(とは言っても彼女も一般の家庭よりも裕福な家庭の子供なのだが)とは
まったくちがう、イレギュラーな存在が私だった。

 それは生まれた瞬間から決められていた、運命じみたモノだ。
 小さな私には、特異というモノは決して勲章ではなく――烙印だった。

13 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 17:46:50.30 ID:C7I1QyDf0 ?2BP(2050)

「紬お嬢様、お疲れ様です。どうぞ、お車に」

 幼稚園を卒園した私に、変化が与えられることはなかった。
 G学園少等部。霊園じみた空間に押し込められ、落ち着いた雰囲気は私の息を止めた。回り
にいるのは、私と同じでも違うこどもたち。
 G学園は、世間では由緒正しい家の子供が入園する学校と言われている。
 私もその一人では在るのだ。
 ということは。
 周りの子供たちも同じ、そう考えるのが普通だ。
 しかし、それは違う。
 周りの子供たちには、ゆとりがある。
 父にも母にもゆとりがあって、子供が主役のイベントには顔を出す。
 幼稚園のころと何も変わらない。
 また、私は一人ぼっちなのだ。

 ――そのころ、私は何年も家族で食事をしたことがなかったのである。

14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 17:48:11.23 ID:E6XyffI60
笑み社はサザエさんSSだけ書いてりゃいいんだよ

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 17:48:40.43 ID:aAsyj/Dl0
期待支援

16 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 17:51:46.62 ID:C7I1QyDf0 ?2BP(2050)

 ――校内で、たった一人で歩き回る。
 
 目的などない。
 ただの退屈しのぎ。
 退屈には慣れている。
 両親もおらず、遊ぶ友達もおらず、好きなものもない私は常に退屈していたからだ。
 4階建て校舎の最上階かグラウンドを見下ろす。昼休み故に、みんなはサッカーをしたり、
鬼ごっこをしていたりと、実に楽しそうだ。表情がそれを雄弁に物語っている。
 ガラスに、自分の顔がうつる。

「――!」

 吐き気がした。
 まるで、まるで死んだ魚のようではないか。
 
 人の表情ではない。

 少なくとも、愛情を受けて育った子供の顔ではない。
 のっぺりとした表情には、なにも描かれていない絵のような不気味さがある。

「なんで……こんなに……」

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 17:56:48.89 ID:isdRwR7m0
いいね。全員分やってくれよな

18 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 18:00:40.05 ID:C7I1QyDf0 ?2BP(2050)

「――であるからして――」

 授業の時間も、私の退屈な気持ちはおさまらない。
 家庭教師に、教えられた内容をまた聞いているのだから当然だ。両親のお金で買ったが、決
して一緒には選べなかった鉛筆を眺めて過ごす。
 周りの子は、皆が可愛らしいイラストの描かれた鉛筆を使用している。
 私は、それらの絵を知ることはないのだが、きっとあれは流行りのアニメや漫画のキャラクター
なのだろう。
 ……緑色。
 私の目に映るのは、無機質な緑色の鉛筆だ。
 買ってきたのは、誰だっただろうか。
 思い出せない。というより、知らないのだと思う。

「この問題を――本田くん」

 教師は私を決して指名しない。
 彼らは、私の後ろにいる財閥を恐れているのだ。
 私に恥をかかせたら、自分がどうなるのかがわからない。そんな打算から、だれも私を見てな
どくれないのだ

19 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 18:06:21.45 ID:C7I1QyDf0 ?2BP(2050)

 ――それでも、私は辛くはなかった。

 小学校で過ごした6年間で、私は空虚だったのだから。
 夏休みの宿題も、苦ではなかった。
 誰かの機嫌を取る必要もなかったので、部屋に籠ってひたすら眠っていた。
 思えば、夢の中ならば父が私を抱きしめてくれるのではないかと期待していたからだ。

 もっとも、私は父の顔を覚えてなどはいなかったのだけれど。

「紬お嬢様。食事でございます。どうか食堂に」

「わかったわ。今行く」

 12歳となった私は、もう自分がほかの子供たちとは決して違うことに、完全に気が付いていた。
 でも、否。だからこそわがままを言わなかった。
 『琴吹紬』という名の本体は琴吹にある。紬、など私を表す記号でしかない。簡略化すれば、私
のことをシリアルナンバーで呼んでしまうほうが楽だ。
 琴吹の名前は軽くない。
 琴吹という名前を持っているのだから、誰にも本心は見せてはならない。
 
 琴吹紬が、紬として人に必要とされることは決してないのだから。

20 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 18:10:35.80 ID:C7I1QyDf0 ?2BP(2050)

 図画工作の時間は没頭できる。
 目の前のリンゴを描け、と言われたら何時間でもやっていられる。
 絵の勉強ならば、小さな頃から教え込まれているからだ。
 
 やりたくもない絵が、上手くなっていってもうれしくなんてなかった。

 誰も見てなどくれないのだから。
 見たところで、大人が見れば社交辞令の対象だ。琴吹の名前が書いてあるだけで、その絵は
称賛に価するものとなってしまう。
 故に、私は絵がうまくなんてない。
 本当に人の心を動かすことなんて、出来はしないのだ。

「あれ? 琴吹さん。ここは赤ではなくて黄色を使った方がいいよ。君は才能がないねえ」

 声をかけてきたのは図画工作の専門教諭である『杉山』だ。
 彼は私が琴吹に関心がなく、また盾としないことを良いことに、私に辛くあたる。

 それでも構わない。
 
 だって、どうでもいいのだから。

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 18:15:33.59 ID:v+/aroqp0
ほう

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 18:15:39.70 ID:aAYDnwbV0
何かクイズショウの嫌な過去を見ているみたいだ。

23 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 18:16:25.11 ID:LiNK+zPg0 ?2BP(2050)

「それでは! 今日の時間はここまで! 宿題として――」

 気がつけば、授業時間は終わりにさしかかっていた。
 クラスメートは画用紙を提出して杉山の話を聞いていた。
 顔を上げた時には、すでに宿題の話になっていたようだ。
 ……図画工作に、未だかつて宿題など出た覚えはない。
 夏休みの宿題で風景画を描いたことはあったが、杉山はそれを目の前で破り捨てて見
せた。悪気100%の行為であったが、その作品にも行為にも興味がなかったため、なんと
も思わなかった。
 擁護してくれる人もいなかったので、その事件は当事者以外は覚えていない。
 
 にやにやと、杉山は私を見る。
 その下卑た眼に鳥肌が立つ。

 ――怖気がした。
 
 杉山の表情は、私を区別する目だ。
 私と、他の子供の違いをはっきりさせるために――

「お父さんの似顔絵を描いてきてくださーい!!」

 ――そんな、ことを言った。

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 18:24:23.51 ID:NgTvte2CO
なんだまた笑み社か


ふむ 支援してやんよ

25 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 18:25:39.97 ID:LiNK+zPg0 ?2BP(2050)

「お父さんの似顔絵かー。上手く描けるかな」

「リカって絵がうまいから大丈夫だよ。このあいだも賞貰ったじゃん」

「あ、あれは……」

「琴吹さん?」

「うん……。あの子が辞退したから貰えたみたい」

「あの子、暗いよね」

「うん。なに考えてるかわからないしね」

 教室の隅で給食のパンをかじっていると、そんな会話が聞こえた。
 下らない内容ではあるが、こそこそしているが気に入らない私は彼女たちの方を見る。

 ――浮かべているのは薄笑い。

 目立ったいじめこそないが、私は確実に孤立していた。
 目立つ行動をされないのも、私が琴吹だからだ。
 琴吹の子供になにかしたりして、それが明るみに出たらその家庭は間違いなく終わってしまう。
 故に、この学校では私は触らぬ神だ。
 関わらなければ、祟りはない。

 ――それでも構わない。
 一人でいいのだ。
 私は――

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 18:31:38.29 ID:eyjcOu1A0
sien

27 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 18:32:00.65 ID:LiNK+zPg0 ?2BP(2050)

 家へと向かう車の中で、運転する執事に尋ねた。

「私、お父さんの顔を知らないのだけれど……」

 運転席に座る執事はバックミラーで私を見る。
 目を少しだけ伏せ、もうしわけありません、と一言だけ口にした。

「どうして謝るの? 学校の宿題がお父さんの似顔絵なの。でも、私は顔も覚えていない。そ
れに関して、あなたには責任なんてないわ」

 外に流れるのは見慣れた風景。
 もう、見飽きてしまった風景だ。
 私が手の届かないセカイ。

「紬お嬢様は、ご主人さまに会いたいですか?」

「別に。なんの感情もないわ。ただ、顔を知らないと似顔絵が描けないから」

「……」

 執事は何も言わなかった。
 口を紡いで、運転に集中していた。
 外には黒髪ツインテールの女の子が、ランドセルを背負って走っていた。

 あの子と私は、決して相容れない存在なのだろう。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 18:34:50.11 ID:mHCe5zsL0
笑み社じゃないか
シエンヌ

29 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 18:36:59.59 ID:LiNK+zPg0 ?2BP(2050)

「――ふう」

 ベッドに寝転んで天井を見る。
 そうすると、天井に厭なコトが浮かび上がってくる。
 まるで映写機のようだ。
 
 杉山の嘲笑。
 クラスメートの冷笑。
 執事の淋しそうな顔。

 案の定、父の顔は思い浮かばない。 
 私と同じで、眉がふとい、ということは知っている。
 髪の色も、肌の色も、そんな声をしているのかもわからない。
 聞いたことがあったとしても、覚えてなどはいない。
 たとえ、今会ったとしても、誰だろう。という感情しか湧かないだろう。

 制服から普段着に着替える。

「そろそろ――だなあ」

 膨らみ始めた胸を見て、そんなことを思った。

30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 18:40:26.29 ID:UIFWGaq30
ふぅ・・・

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 18:43:39.00 ID:F+EEOD1/O
>>30
おいロリコン

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 18:44:07.79 ID:WsEYXthV0
ふむ とか ほうとか言う奴キモい

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 18:44:14.52 ID:iKIEKICs0
こういうSS書こうとしてたのに

34 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 18:45:45.86 ID:LiNK+zPg0 ?2BP(2050)

 ――結局、私は似顔絵を提出できなかった。

 真っ白な画用紙を杉山に見せる。
 執事の顔を描こうともした。
 だが、それでは駄目だ。
 私の心の隙間を認めることになるからだ。
 
 さびしいから。
 くるしいから。
 埋めてほしいから。
 助かりたいから。

 影武者とは、そういった心の緊張から造られるものである。
 敗北してしまうのが分かっているからこそ。人は自分を隠すのだ。
 杉山も、それを理解している。
 もとより、この男は私の心の隙間につけこんでいたのだから。

「君……いや、もういい」

 俯き、先刻までの勢いを失くす杉山を見ると、なんだか惨めに思えた。

 それが私の6年間。
 親の愛情とは全くの無縁。
 人に付け込まれないために生きてきた。
 そうして、中学生になったのである。

35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 18:51:30.68 ID:Ao6BvyDrO
なん…だと…

36 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 18:52:36.43 ID:LiNK+zPg0 ?2BP(2050)

 変わる筈のない日常。

 変わる事のない自分。
 
 変わる意味のなどない。

 琴吹の娘としての自分だけを守っていればいいのだ。
 そのこと以外は、なにも考えてはならない。
 それでも、時には思った。

 家族で、一緒に食事をしてみたい。

 否。それはむしろ『誰かと時間を共にしたい』という欲望が大きかったのだ。
 心を通わせることなどない。
 私を守るという命令を遵守する者。
 私を保護するという名目で行われる軟禁。

 自室にはテレビもない。
 あるのは勉強机とグランドピアノと天蓋付きのベッド。
 このピアノは、母が昔使っていたモノだという。
 コン、と鍵盤を叩くと高い音が鳴った。

 それと同時に、ドアをノックする音が聞こえた。

「紬お嬢様。お電話です」

「だれ?」

「……奥さまです」

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 18:56:42.76 ID:isdRwR7m0
デジャブ感があるんだが

38 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 18:57:30.51 ID:LiNK+zPg0 ?2BP(2050)

 受話器を取ると、聞き慣れない声がした。

『紬? 久しぶり』

「お母さん?」

『ええ。少しだけ時間ができたの。
 ――学校はどう?』

 ……少し、間を開けた。
 母が中学校ではなくて学校と言ったのは他でもない。間違えないためだ。
 私が、今小学生なのか中学生なのかも覚えていないのだから、間を開けて考えた。どちら
にも対応できる言い回しを。
 これがその答えだ。

「ええ、つつがなくやってます。それより――」

『え!? 今行くわ。それじゃあ紬。お母さん、用事ができちゃったからまた後でね』

 一方的な会話。否、会話にもなっていない。
 まずか30秒の干渉行為だ。
 他人といってもいい。
 あんな母親なら、私はいらない。

 またあとで。

 そんなモノ――もう二度と来ないのだろうから。

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 19:02:57.93 ID:eXui2QhoO
支援

40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 19:04:47.20 ID:NgTvte2CO
>>32
ふむ・・・・それはすまなかったな・・・・

41 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 19:07:06.82 ID:Ktie+E230 ?2BP(2050)

「琴吹さん。ちょっと来てくれない?」

 ある日。見知らぬ男子生徒に呼び出された。
 背丈は170センチ程度の長身から察するに、三年生だろう。
 中学生でいうところの1つの年の差は大きい。
 14分の1と、これから何十年後の35分の1では大きな人生経験に差があると考えるから
だろう。
 それ故にクラスは静まり、私は教室に混乱を招くのが嫌だったので、大人しく男子生徒に
ついていった。
 
「なんですか?」 

「なんでもないけど、なんでもあるね。
 君のことが好きなやつがいてさ」

 ――なんだ。
 そういうことか。

42 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 19:09:01.95 ID:Ktie+E230 ?2BP(2050)

「そうですか。じゃあ伝えておいてください。
 もう、二度と関わらないでくれと」

 くるり、とスカートを翻してUターンをする。
 15歳の少年の、下らない恋愛ごっこに付き合っているほど、私は暇ではないし自由では
ない。
 そも、中学生の恋愛なんて限りなくアクセサリーだ。
 
 誰かが好き。
 誰かと付き合っている。
 誰かと深い関係になった。
 
 それを他者に言いふらして優越感に浸る。
 その為の恋愛ならば、いらないし関わりたくもない。

 と。
 肩に男子生徒の手が乗る。

「……なあ、悪いことは言わないからやめとけよ。そういうのは」

「触らないで」

 手を払いのけて教室へと向かう。
 男子生徒は『知らないぞ』とうわ言のようにつぶやいていた。

43 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 19:11:04.16 ID:Ktie+E230 ?2BP(2050)

今から少し席をはずす。

食事。

44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 19:25:14.38 ID:IdK30soaO


45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 19:35:05.37 ID:xGwg97KDO
続き気になる

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 19:39:23.59 ID:IdK30soaO
えみしゃ展開だとムギが死ぬ

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 19:55:18.32 ID:IdK30soaO
今見てる奴挙手!

ノシ

48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 20:15:30.76 ID:IdK30soaO
ノシ

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 20:15:50.09 ID:Ce7T6p330
>>46
じゃあ唯達と一緒に居るのは・・・

50 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 20:18:33.34 ID:/nXyl+TX0 ?2BP(2050)

ただいま。

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 20:22:50.41 ID:IdK30soaO
キタ

52 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 20:23:55.73 ID:/nXyl+TX0 ?2BP(2050)

 その次の日から、誰かに付きまとわれている気がする。

 具体的にはわからない。
 教室にいる時も、食堂にいる時も、なにをしていても視線を感じる。
 昔から琴吹の娘ということで視線を浴びてきたが、これは違う。今までの視線とは全く
異質なもの。
 喩えるなら、爬虫類じみた何かだ。
 じっとりと、べたべたとした視線はどうしても気分が悪い。
 羨望の眼で見られるよりも、それは不快だ。
 後ろを振り返っても、それは変わらない。
 どこから見られているのかも、誰に見られているのかもわからない。

「……気持ちが悪い」

 トイレにいても、視線を感じる。

「……え?」

 この汚物入れ。

 ――二重になってる。

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 20:28:18.75 ID:F+EEOD1/O
ムギを好きになるやつなんて信じられない

54 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 20:30:19.42 ID:/nXyl+TX0 ?2BP(2050)

 手に取って見てみる。

「やっぱり――」

 二重底になっている。
 そのうえ下のスペースに穴が空けられており、そこからカメラのレンズが覗いている。
 たった2ミリ程度の穴。今までは気にも留めなかったであろう異変だ。
 最新のカメラらしく、ご丁寧に映像をリアルタイムで送信されている。
 
 ――感じたのは怒り、などではない。

 ひたすらの嫌悪だ。

 おそらくこれは私に向けられた嫌がらせであろう。
 それでなくては、他の生徒がこの学校にあるであろう無数のカメラに気がつかないわ
けがない。
 私のみを盗撮するように、カメラは設定されてある。
 こういったことには詳しくない故、どのようにすればそんなことができるのかは知らない。
 だが、この所業を行ったのがだれかは見当がつく。

「……どうして、こんなことを――」

55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 20:30:42.12 ID:IdK30soaO
>>53
ニコ動

56 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 20:37:37.01 ID:/nXyl+TX0 ?2BP(2050)

「あの、神崎さん」

「え? どうしたの? 琴吹さん。珍しいね」

「そうかしら。
 最近、妙な視線を感じたりしない?」

「そんなことはないかなぁ。もしかして、なにかあったの?」

「……」

 周りの様子をうかがう。
 幸い、誰もこちらを見ていないようだ。隣の席ではあったが、一度も話をしたことのない神崎
に今回のことを話してしまおう。
 私だけが知っていても意味はない。
 相手は私の映像を見ることが趣味なのだから、他の子には決して知られるわけにはいかない
筈だ。
 ポケットに入れておいた隠しカメラを取り出して見せる。
 神崎の目が大きく見開く。

「それって……」

「ええ、お手洗いで見つけたの」

「最悪……。それってまさか……」

 一人では分が悪い。
 こちらは全く悪くないのだが、便宜上の仲間は必要だ。

57 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 20:46:16.72 ID:/nXyl+TX0 ?2BP(2050)

 ――それから、水面下でこの話題は広がっていた。

 教員たちは無関心だ。
 というよりも、関わりたくないというのが本音だろう。
 なにせ、このG学園には全国のお金持ちの子供が集まる学校だ。妙な動きをして、自分の
立場を危うくするなんてことは愚の骨頂である、と教員たちは考えているのだ。
 本来なら。
 本来ならば最低だ。
 それではここは無法地帯になってしまう。
 否、すでに無法地帯となっている。
 なにせ盗撮用カメラが悠然と学校の至る所に仕掛けられているのだから。

「琴吹さん。もう、この学校のほとんどが『アノコト』は知ってるわ」

「そう」

「そう、って。琴吹さんは怒ってないの?」

「別に。ただ、愚かしいだけ」

 愚かしい。
 本当に、愚かしい。
 意味のないことに、道理のない行動に。
 腹が立つのではなく――嘆かわしい。
 だから――

「とにかく、そろそろ向こうも動くだろうから。証拠の方を集めておいて」

 ――慈悲の気持ちで、再起不能にしてやろう。

58 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 20:58:45.37 ID:/nXyl+TX0 ?2BP(2050)

 家へと帰る車の中で、珍しいモノを目にした。

「あれって――」

 二人の女の子……年は私と同じくらいだろう。
 彼女たちが持っているモノはアイスクリームだ。
 アイスクリームが珍しいのではない。あの、コーンと呼ばれる菓子が珍しいのだ。
 デザートでアイスクリームを食べるのは、私にだって経験がある。ただ、その際には器に
乗せられ、飾り付けをされた状態だ。
 つまり、私はああいった形でアイスクリームを食べたことがないのだ。

「和ちゃ~ん、それちょうだい!」

「駄目よ。あんたには自分のがあるじゃない」

 ……あんな風にアイスを食べるなんてことが、私にはあるのだろうか。
 きっと、二人は仲のいい友達なのだろう。私くらいの年ごろなら、当たり前のことだ。
 
 友達と買い物をして。
 友達とファストフードのお店で食事して。
 友達と部活をして。
 少し先の話だけど――バイトをしたりして。

 私には、なにもない。

 一人で買い物をして。
 一人で食事をして。
 一人で眠って。

 そんなことを考えると――なんとなく目がぼやけて、鼻のあたりがじんじんと熱くなった。

59 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 21:05:55.62 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

「友達――か」

 豪奢なテーブルで食事を採っている間、そんなことを考えていた。
 しん、と静まりかえった食卓には私以外誰もいない。
 椎名が私に言った。

『ご飯ってさ。家族とかと食べるより1人のがよくない?』

 そんなコトは知らない。
 比較なんてできない。
 比較対象がないのだから。
 経験のないことを、推し量ることなんてできないのだ。
 家族で食べる食事は、そんなにも煩わしいのだろうか。

 ――そうだろう。
 だって。
 私の頭の中では、家族という概念(モノ)はないのだから。
 一人が平常。
 誰かのために笑顔の仮面(ペルソナ)を被るなんてしたくない。
 味気ない。
 こんな料理を作ったシェフなんてクビにしてやる。

 ――と。
 それと同時に、携帯電話から無機質な電子音が聞こえた。

60 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 21:13:44.92 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

「……はい」

『もしもーし! 神崎だけど琴吹さん?』

「貴女は私の携帯電話に電話をしたんだから、そうでしょうね」

『だよねー。
 あのさ、今度一緒にご飯食べに行こうよ!』

「……え?」

『だから、レストラン予約したから。食べに行こうよ。有紀と香澄も行くからさ』

 ――そんなバカな。
 私が、大人数の食事について考えていたら。それについての電話がきた。
 こんな小説のような展開が、現実に存在するのだろうか。
 ……だが、事実存在して起こっているのだから仕方のない。
 日にちを尋ねると、神崎は能天気な声で『あした』と告げる。
 手帳を見る――予定はない。否、いつだって予定らしい予定なんてないのだ。

「いいわ。それじゃあ明日」

 ――明日は土曜日。
 私の、初めての楽しい食事になる。
 頬が、緩んだ。

 ――そう。緩んだのだ。
 あの時は。

61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 21:15:37.13 ID:iKIEKICs0
    ペルソナ
笑顔の仮面

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 21:18:27.57 ID:wVjnxZvxO
裏切りフラグktkr

63 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 21:21:24.94 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

 その日は、なかなか眠れなかった。
 心が躍っていたのをよく覚えている。
 だって、初めての友達だったのだから。
 私にも。
 私のような人間にも友達ができたのだ。
 それ以上にうれしいコトなんて、きっとない。

 どんな服を着ようか。
 どんな香水をつけていこうか。
 美人ではない私を、みんなは笑わないでくれるだろうか。

 不安と、期待。
 期待が、不安。

 胸がドキドキする。
 動悸とは違って、気持ちがいい。

「――ああ」

 こんな気持ちが、ずっと続けばいいのに。
 
 そう心の底から願った。

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 21:22:58.62 ID:dCnllsjN0
涙がgg

65 :細野はるみ←クソコテ ◆OILa31VhUg :2009/12/17(木) 21:23:59.08 ID:7YRlzfsx0
>>1

またこいつかよ?

おまえ500やれよカス

66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 21:24:29.42 ID:WhsYj5UaO
笑み社のSSってなんで何時もこんなに暗いんだ?
コテ変えた方いいんじゃね?

67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 21:26:51.94 ID:sLJEwp9vO
>>1
この前の憂のやつおもしろかったぜ

支援

68 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 21:33:41.84 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

 ――待ち合わせ場所を見つけるのにも苦労した。

 こんなこと、今までは一度としてなかったのだから。
 制服ではないみんなを見つけるのにも、些かの時間を要した。

「琴吹さん。息切れてるけどどうしたの?」

「……そ、そんなことは、ない、わ……」

 時間に遅れないようにと走っていたため、肉体は酸素を欲している。
 故に呼吸が乱れる。汗で髪が貼りつくのが気持ち悪い。
 ――大きく深呼吸。
 神崎はにこりと笑って、私の手をとる。

「琴吹さんって、私たちを遥かに凌駕するまでのお嬢様でしょ? 私が、ナイト役を務めさせて
いただきます」

 ひざまついて、手のひらにキスをする。
 まるで子供のころに誰かに聞かされたおとぎ話みたいだ。

「じゃあ、私は琴吹さんの右手ね」

「私は琴吹さんの後ろ!」

 まるで、これじゃあSPだ。
 でも――嫌な気持ちにはならなかった。

 だって……。
 これが友達というモノだと思うから。

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 21:34:36.50 ID:oAs6A0jSO
支援

70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 21:35:32.28 ID:tHIC7ToR0
ダッシュ多過ぎてキモい

71 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 21:40:46.21 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

「ここ?」

 到着した場所は、レストランというよりも『バー』という雰囲気のお店だった。
 ……否否。看板には『魔の巣』と書いてある。どうやら、本当にバーのようだ。

「うん。ここ」

 神崎たちの口数が少なくなっている。
 彼女たちも緊張しているのだろうか。
 もしかして、行きつけではなくて初めての場所なのか。
 神崎が私の手を強く握る。
 ……それに対して、私も握りかえす。

 にこり、と笑う。
 誰かに向けて笑ったなんて、久しぶりだ。

「琴吹さんって……。すごい美人だったんだね」

 神崎がそんなつまらない冗談を飛ばす。
 知らなかったの? と神崎を茶化しながら、椎名と豊田がバーの重い扉を開けた。

72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 21:42:42.32 ID:M1Rz5TmOO
オーホッホッホ

73 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 21:51:49.18 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

「よお、遅かったじゃあないか」

「……ごめんなさい」

「まあいいわ。とにかくよ、琴吹に会いたかったんだから」

 ……中に入って数秒で、こんな会話が行われた。
 私の両手を、神崎と豊田が握っている。
 満身の力を込めている。
 だめだ、解けない。
 目の前にいるのは――あの時に邪険にした男子生徒と、知らない男が3人。二人は
身長は190cmを超えていり大男だ。もう一人は線が細い。神経質そうな顔をした男。

74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 21:53:50.09 ID:NgTvte2CO
嫌な予感しかしねえ・・・・

75 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 21:53:58.53 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

「もしかして――」

「そうだよ。琴吹――いいや。つむぎちゃん」

「このお方が、てめえが邪険にした語学院さんだ!!」

 ……語学院といえば――最悪だ。
 彼が、G学園の理事長の孫である語学院光彦之介(ごがくいんみつひこのすけ)だとすると、
生徒は彼には逆らえない。
 唯一、比肩することができるのが琴吹だが、こうなっては逃げられない――

「ご苦労だったなあ!」

「……はい」

 そんな声と同時に――椎名は私の背中を押した――

 ドン、という鈍い音が……勘違いの友情が壊れた音だった。

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 21:54:09.11 ID:gkdDGj+YO
笑み社のSSっていっつも同じ展開だよな

磯野家が出てきてよくわかんなくなって終わりっていう


最後まで見たことないけど


ま~たタラヲ出すのかよって感じ
  / ̄ ̄ ̄ ̄\
  / \__从__丶
 i / """ """ i
 |/ (●) (●)|
 (6  ノ(_)、 |
  丶  ト==イ ノ
   \_`ニ"/

77 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 21:58:50.37 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

「うひひひひひひひいひひ!!!」

 まるで――飢えた豚に餌が投げ込まれるように。

 まるで――アリの巣にチョコレートを落とすように。

 まるで――力なきものに銃を渡すように。

 まるで――偽りの友情に区切りをつけるように。

 まるで――はじめから友達なんかじゃなかったように。

 私は――彼らに差し出された。

「この――この裏切り者おおおおおおおおお!!!!!!!!!」

「残念でした~。彼女たちはマスター映像を流出させるって言ったら、すぐに寝返って
くれました~」

 ……それからのことは、よく覚えていない。

 というよりも思い出したくも、ない。

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 22:02:11.81 ID:w7LZf0d1O
ここでモコクさんが颯爽と登場!!

79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 22:02:48.80 ID:UYAWDqjj0
斉藤はどうした 斉藤ー!

80 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 22:04:54.23 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

 ――気がつくと、目の前に男が倒れていた。

 なにがあったのだろうか。

 服は――破れてもいない。

 ――血も、ついていない。

 あるのは、窓から差し込んだ朝日と――


「ご無事ですか。紬お嬢様」


 ――幼いころから、私の父親代わりであった斎藤の姿があった。

 鮮血に塗れたその顔は、滾る怒りを抑えて平静な表情で――

 体液に浸かったような腕で、足で、立っていた。

「斎……藤…………」 

「なにも、なにもなかったのです。
 どうか、彼女たちを恨まないでいただきたい」

 身体が汚れるのも厭わなかった。

 とにかく、私は私を守ってくれた人に抱かれて、泣いていた。

81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 22:05:34.84 ID:GTcWXc280
なんで斉藤はこんな強いんだwwww

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 22:08:44.53 ID:w7LZf0d1O
斎藤「ドーーーーン!!」

83 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 22:13:36.95 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

 ――それからだ。

 私が、強くなろうと決めたのは。

 精神が強い、というのは結局は肉体の強さが伴っているから言われるのであって、今回のような
事態に対して、まったく対策が取れない。
 
 戦略が戦術に負けてしまう状態がある。

 それは、戦力差がはっきりしてしまった場合である。
 たとえば、天才戦術家が落とし穴で敵を落としても、その敵が空を飛べたとするなら、その策に
意味なんてない。
 そうなると結局は戦力の戦いになるのだから、やはり力という土台は重要だ。

「セイヤッセッ!!」

 暗殺拳を由来とする憲法を、斎藤はマスターしていた。
 かつては世界格闘大会にも出場していたという斎藤は、私にそれを伝授してくれるという
のだ。

「そうではありません。紬お――」

「斎藤。稽古のときは私が下です。だから――」

「……わかりました。紬。
 波動の構えは腰を落とす必要があります」

「はい。師匠」

 私は――強くなろうと決めた。

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 22:16:05.43 ID:M1Rz5TmOO
ムギ「烈風拳!」

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 22:16:07.37 ID:F+U1NwAAO
誤字
憲法×
拳法○

なにこの展開。ピアノどこいったし

86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 22:16:33.50 ID:leGuABtEO
急展開キタコレ

87 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 22:19:29.92 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

 それから、私はまた一人になった。

 神崎と椎名、それに豊田はいなくなってしまった。
 全員が転校したからだ。
 修学旅行にも、私は行かなかった。
 イタリアには興味はなかったし、なにより楽しくないのだ。
 家で拳法の稽古をしているほうが有意義だ。

「――ああ。そうだ」

 2ヶ月後。ピアノのコンクールがある。
 幼いころから教え込まれたピアノだが、発表の場を持ったことは一度もなかった。
 絵と同じく、私の芸術の類はすべて社交辞令の道具になってしまうからだ。

 だから、今回も出場しない。
 ピアノなんて――本当の意味で聞いてもらえる人がいなくては意味がないのだから。

88 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 22:27:02.30 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

「……退屈」

 部屋のピアノを弾いていても、楽しくなんてない。

 確かに、母のピアノからは綺麗な音がする。
 このピアノで練習した私なら、きっとどんな人よりも上手に演奏できる。
 ……でも、つまらない。

 私を見る人は、みんな先入観を持っている。

 ――琴吹の娘。

 ――金持ち。

 ――お嬢様。

 私という存在は、金という大前提からなりたっている。
 それがなくなってしまえば、根元のない木と同じで崩れてしまう。
 予定外のイレギュラー一つで、いとも簡単に。
 事実、そんなことが起こったじゃないか。
 力がないばかりに、人を信じたばかりに――。

 だめだ。
 考えないようにしよう。

 かぶりを振ってもう一度鍵盤をたたき出す。

 また、無機質な電子音が鳴り響いた。

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 22:30:23.40 ID:IhourfAPO
俺はこういう感じ話好き

試演

90 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 22:36:39.78 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

「もしもし」

『……紬か』

「私にかけたつもりなら、そうですけど」

『私は、お前の父親だ』

 知らない声だ。
 聞いた事のない声。
 以前、同じようなコトがあったような気がする。
 ……失望に似た。あの――

「そうですか。それで用件はなんですか?」

『随分と淡白なんだな。
 要件を言うと、今度のピアノコンクールに、私たちも出席することにした』

「仕事でですか?」

『いや違う。プライベートでだ。父親として、母親としてな。
 そして、そのあとに大事な話がある』

 ……いったいなんなのだろうか。
 父と言われてもピンとこない上に、大事な話を一方的にされるらしい。
 どちらにせよ、私はコンクールに出場する義務ができたようだ。
 そうですか、と言って電話の切る。
 未練などない。
 あんな父親なら、あんな母親なら。いなくたって変わらないのだから。

91 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 22:45:21.94 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

「お嬢様。食事でございます」

「ありがとう」

「……お嬢様は、少し外向的になりましたね。以前は私に感謝の言葉なんて」

「そう? だったら今までの非礼を詫びなくてはならないわね」

「いえいえ。そのようなことは」

 今日の食事はビーフステーキのようだ。
 一人で食べる食事は味気ないけれど、斎藤が呼んできてくれるのなら、今のままでも
良いと思う。
 少しだけ、充実した気持ちになるからだ。拳法を始めたからだろうか。

92 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 22:46:35.73 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

「そういえば、お嬢様」

「どうしたの?」

「なにか、嬉しいことでもあったのですか?」

「べ、べつに?」

「そうですか? ご主人と奥さまがコンクールにご出席なさると聞いて、喜んでいらっしゃるのでは
と思いまして――」

「――え?」

 そんなわけがない。
 今まで、一度もイベントに来てくれなかったのに――突然一方的に報告されたから驚いたんだ。
 嬉しくなんて、ない。
 でも――胸が温かくて、にやにやする。
 まるで、神崎に食事の誘いを受けた夜のような気持ちに、私はなっていた。 

93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 22:50:08.14 ID:oAs6A0jSO
支援

人少ないけどがんばれ!

94 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/17(木) 22:50:21.06 ID:iZqjeNhz0 ?2BP(2050)

少し休憩する。

95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 22:51:19.93 ID:t6vonu4N0
なかなかやるな
読みやすい

96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 22:52:01.29 ID:wVjnxZvxO
笑み社のSSで唯以外が主役だと、BAD ENDにしかなる気がしない

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 22:53:56.36 ID:t6vonu4N0
中学生あずにゃんは黒セーラーで完璧

98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 23:02:26.96 ID:IdK30soaO
えみしゃは唯派か

99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 23:12:08.15 ID:4KWMIuI/O
文章下手くそ

100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 23:21:13.75 ID:uf2uiA770
vipってカス以下の物書き(笑)から作家崩れまで幅広いよね
支援

101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 23:23:24.80 ID:IdK30soaO
えみしゃはどっち?
ニコ動はクリエイター多い

102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 23:23:36.98 ID:HunMbcwDO
癖がありすぎて、どのSSの主人公も同じ性格に見える
あとダッシュ使いすぎててちょっと読みにくい

103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 23:26:55.87 ID:uf2uiA770
ニコ動とか一握りガチな才能人いるけど
外周のクソ取り巻きと勘違いゴミ野郎のせいでだいぶ損してるよね
才能あるヒトは見切りつけた方がいいよね

104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 23:26:58.87 ID:isdRwR7m0
福本作品をとびきりスイーツにした雰囲気
人形だとしても心情描写が淡白すぎるような

105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 23:27:10.23 ID:t6vonu4N0
俺は…使いすぎのSSの方が読みづらいってかイラつく

106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 23:32:54.25 ID:dCnllsjN0
三点リーダは仕方ないと思うがな
…や!を脳内補完してもらうよりは書いた方が確実だし

107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 23:38:49.82 ID:+3MVIAma0
いいじゃない

108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 23:41:35.31 ID:BbihPDV0O
かなわ

109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/17(木) 23:43:40.16 ID:IdK30soaO
えみしゃが読みやすくするなんてな

110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:01:26.84 ID:wnNCkbwJO


111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:01:44.82 ID:0ai1Nc/MO
全レスとかする構ってちゃんのクソコテに相応しい駄文

112 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 00:05:05.55 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

そろそろ再開する。

113 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 00:11:05.56 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 両親が、初めて私のためになにかをしてくれる。

 私が、初めて両親の前で晴れ姿を披露する。

 今まで、一度もなかったコト。
 どんなに願っても、どんなに頼んでも。
 どんなに夢見ても叶わなかった。
 
 私は、両親という概念がわからない。
 母や父が見に来るとは言っても、実際のところはよくわかっていない。
 だって。
 物心ついてから一度も会ったことがないんだから。
 記憶にない人物のために、私は演奏をする。

 ――それでも、いい。

 誰かの為に、私は努力をしてみた。

 部屋に響くのはピアノの旋律。

 コンクールの日は、翌日に迫っていた。

114 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 00:17:35.02 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 そうして、コンクールの日はやってきた。

 携帯電話のアラームが鳴る。
 着信音と同じ無機質な音だ。
 周りの子たちは、流行りの曲を着信曲にしているが、私にはどうすればいいのかもわからな
い。そのうえ流行りの歌も知らないのである。
 洗面室で顔を洗い、歯を磨き、髪を整える。
 ――これで、琴吹紬の完成だ。
 鞄に楽譜などを詰め込んで、斎藤を呼ぶ。
 ……今日、両親は来てくれるのだろうか。
 一抹の不安。
 結局は、私の独りよがりだったのではないのかという。
 そんな、不安定な感情が心を揺らす。

「準備は、整いましたか?」

「え、ええ! 行きましょう」

 斎藤の声で我に返ってかぶりを振る。
 頭はすっきりとした気持ちになって、重い自室の扉を開けた。

115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:22:27.86 ID:heOM4jxqO
よく考えたらこの心理描写の部分もムギがみんなに話して聞かせてるんだよな
なんかシュールだな

116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:23:22.22 ID:g3PLVguX0
>>115
そこはまぁ必要な部分だけ話してるんだろうな

117 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 00:25:17.68 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「私の出番は何時から?」

「はい。14時でございます」

「……それまで、コンビニってところに寄ってもらえないかしら」

 この道を見ると思いだす。
 同じ年頃の女の子が、友達と一緒に買い食いしたりして遊んでいるのを。
 それを見て――私は羨ましいと感じていたんだ。
 あんな友達が欲しいと、渇望していたのだ。
 でも。
 そんな友達はできなかった。
 誰もが打算と損得勘定で動いているのだ。
 だから平気で人を見捨てて切り捨てる。
 そんな人を、私は認めない。
 ただ、コンビニという所で。
 あそこのコンビニで、アイスクリームを食べてみたかっただけ。

「わかりました。私は車内で待機しておりますので、なにかありましたらご連絡ください」

 駐車場の少し広いコンビニ。
 きっとどこにでもあるコンビニでも、私にとっては初体験の場所だった。

118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:28:36.44 ID:g3PLVguX0
りっちゃんが自分の事を話したがらないって部分もやって欲しいものだが

119 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 00:30:46.78 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 店内は、妙に明るい。
 24時間営業だというのに、どうしてここまで清潔を保っていられるのだろうか。
 自動ドアを通ると、私は自然に左側へと曲がっていた。
 なにも考えていない。
 とにかく、コンビニという場所を見たかったのだがなんとなく左側、本のコーナーへと
足を運んでしまった。
 大きな窓からは外が見える。
 車道から見れば、ここにいる3人の客……立ち読みをしている彼らの姿は丸見えだ。
 そもそも、本を読みたいのであれば買えばいいのに、どうして彼らはこんなことをしているの
だろうか。
 私も本を手に取って見る。
 客が読んでいるものと同じ漫画雑誌を眺める。

 ――なんだか、普通の女の子になったみたいだ。

 そんなことを、考えていた。

120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:35:21.47 ID:H2v/LcGN0
つむぎちゃんに目覚めた

121 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 00:35:49.28 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 本をもとの場所に戻して、飲み物コーナーへと足を運ぶ。
 大きな冷蔵庫にはたくさんの飲み物が置いてある。コーラやオレンジジュースなど、その種類
は豊富だ。
 端の冷蔵庫にはお酒が入っている。
 冷蔵庫の扉には『18歳未満のお客様には販売できません』というシールも貼ってある。
 こんな形式上の警告に、意味はないことを知って貼っているのだから少し笑ってしまう。

 ……と。
 そうではない。
 私の目的はアイスクリームとお菓子だ。
 ふつうの女の子が食べるお菓子というのはどういうものなのだろう。
 迷ってしまった。
 お菓子のコーナーの前で、私は考え込む。
 なにが人気なのかも、なにが美味しいのかもわからない。

「みーおー! これこれ! これにしようぜ!」

「いいけど。ひとつだけだからな」

「う……。じゃあ、これ!」

 隣で騒がしくお菓子を選んでいる女の子を見て、同じものを手に取った。
 
 そうして、お菓子は手に入れた。
 次は本命のアイスクリームだ。

122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:38:28.30 ID:wnNCkbwJO
律きたあああ

123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:40:17.95 ID:/mW6qVdTO
支援!

>>1がんばれ

124 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 00:45:04.61 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「アイスアイス……」

 クーラーボックスのようなものに入っている。
 斎藤からはそう聞いた。
 私には琴吹家直伝の索敵能力がある。
 それ故に、見つけられない筈がないのだが。

「ない……」

 どこを探してもない。
 お菓子のコーナー。
 チョコのコーナー。
 スナック菓子のコーナー。
 どこを探してもない。
 アイスは、もしかしたら売ってないのかも。
 そう思ったら――

「ねえねえ梓! これ美味しそうじゃない?」

「そうかな? こんな寒い日にアイスなんて……」

125 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 00:46:42.31 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 アイス?
 そんな単語が聞こえた。
 急いで声のするところまで歩く。
 走るのは恥ずかしいから、あくまでも早歩きだ。

 入口の横に、それはあった。
 ツインテールの女の子。かつて見た、ランドセルを背負った子なのだろうか。その子が、短
い髪を二つに分けた女の子と一緒にアイスを取り出している。

「それじゃあ私も雪見買うね。純は?」

「ガリガリくん」

 私は――ソフトクリームだ。

 コーンのついたアイスクリーム。
 それが、私のあこがれなのだから。

126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:47:34.87 ID:g3PLVguX0
このムギはかわいいな

いや違うかこのムギもかわいいな

127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:48:16.04 ID:gxfnfRo90
お酒はハタチになってから


128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:48:50.83 ID:Tb9s/pe+O
純って憂と同じ中学じゃ…

129 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 00:53:22.25 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「おい……しい……」

 クリームの味も、ミルクの味も、なにもかもが安っぽい。
 チョコレートだって、カカオマスと砂糖のバランスが最良ではないためか味が洗練
されてはいない。
 でも、どうしてだろうか。
 一瞬でも、ほんの一瞬でも私は普通の女の子になれたのだ。
 琴吹の跡取りとしての紬ではなくて、コンビニで買い物をする15歳の女の子である
紬として在るコトができたのだ。
 
 そうして得たもの。
 そうして得た結果。
 そうして得た答え。

 それがこれだ。
 メルセデスのシートに寄りかかってソフトクリームを舐める。
 一緒にチョコレートを口に運び、コーラを飲んでみた。
 ふつうの女の子は、こういうものを食べながら、友達と話をするんだ。

「お嬢様。そろそろ到着でございます」

 総ての憧れを完食した途端。コンクール会場である桜文化会館に到着した。

130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:56:05.57 ID:kM7p3Ysk0
test

131 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 00:58:04.63 ID:8BpGQ/PmO
>>127-128
                  ._」   L_/    /
                ., ´: : :>、_/z‐七<
              ./: : :,zチ‐" : ∧: `丶ゝ:. \
              /: : : .//: : : :/: 小 : : : |: : : : : \
            /): : : レ: :,-‐フ:/ | \:.:.|`ヽ: : : : :.\
           ///).|/:/〃  |   ヽト、: :|: : : :l: : :l
          /,.=゙''"/ : |:. :/z=、    テミ、: |: : : :| : : |
   /     i f ,.r='"-‐'つ イ j`ヽ    r┘ヾj: : :| | ト、.|
  /      /   _,.-‐'~:. :?|7 ハ.}    {.ィ_ハ|リ|: ハ:| | `|
    /   ,i   ,二ニ⊃ : :|弋廴ノ     弋_ノ ∧ 小:|  こまけぇこたぁいいんだよ!!
   /    ノ    il゙フ ぃ: : :|     r‐ ┐    ハj: ハ |
      ,イ「ト、  ,!,!|ハ:.: ト、: :ト、    l  ノ   ,人: :/ リ
     / iトヾヽ_/ィ"|. \|. \|\|r―┬<//}:.:/


132 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 00:59:47.85 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 ――控室は苦手だ。

 それが共同だとなおさらだ。
 いらぬ緊張感が伝わってきてしまうからだ。
 そわそわしている者もいれば、リラックスしている子もいる。
 私は、どちらなのだろうか。
 楽譜を確認しようと、バックを開ける。

「……あれ?」

 楽譜のあいだから、一枚の便せんが落ちた。
 身に覚えのない手紙だ。
 手に取って、それを見てみる。

「……あら」

 そこには上品な字や少し雑な字で、それでも心のこもった字でいくつものエールの言葉が書いて
あった。
 真ん中に円が描かれており、中心には『紬お嬢様へ』と書いてある。
 その円の端には『従者一同』と書かれている。

「――ああ。そっか」

 気持ちが切り替わった。
 誰かのために弾くという意識が出てくる。

 ――私の出番がやってきた。

133 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 01:02:47.92 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 舞台の上に立つと、何も考えない。

 今までのこと。

 両親のこと。

 斎藤たちのこと。

 ふつうの女の子のこと。

 琴吹の名前のこと。

 誰のために弾くのか。

 なんのために弾くのか。

 なにも考えない。

 考えられない。

 余裕がない。

 余裕がない私。

 ――鍵盤をたたく。

 ピアノオリジナル曲『家族』

134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 01:03:21.96 ID:wnNCkbwJO
むぎゅ

135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 01:04:35.29 ID:HUqm5LUf0
結局ムギはヤられてないんだよな?

136 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 01:07:11.69 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 家族の形。

 それはそれぞれだ。

 家族の意味。

 それもそれぞれだ。

 家族は家族。

 それは手錠のようなもの。

 生きていても死んでいても変わらない。

 私と両親は家族なのだ。

 悲しいかな。

 嬉しいかな。

 ただひとつだけ、家族はその悉くが綺麗というわけではない。

 私の曲は、そんな曲だった。

 見ている? お父さん。

 聞いてる? お母さん。

 これが――私の答え。

137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 01:07:40.79 ID:kJFqkItHO
>>135
斎藤を信じろ

138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 01:11:36.19 ID:y/pTz3UT0
支援

139 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 01:15:40.50 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「よかったですね。お嬢様」

「ええ。納得のいく演奏だったわ」

「私は音楽に関しては素人ですが、今日のお嬢様は、他の誰よりも輝いていらっしゃいました。
間違いなく、本日の大賞はお嬢様です」

 ――音楽に関して素人?
 なにを謙遜しているのだか。
 私は知っている。
 琴吹家のオーケストラ。それを指示しているのはなにを隠そう斎藤だ。
 斎藤自身、バイオリンの腕前は世界でも通用するであろう。
 その彼が音楽の素人などと誰が言えようか。

「早く帰って、お父さんに見てもらいましょう。この賞状とトロフィーを」

「お二人も、きっと待ち遠しく思っていることでしょう」

「そうだといいけれど、ね」

 口ではそう言っても、やはり期待してしまう。
 父に、褒めてもらいたい。
 母に、抱き締めてもらいたい。
 とっくに諦めた筈の願望が、溢れて来た。

 そうして、私は帰宅した。

 家には両親はいなかった。

140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 01:16:46.94 ID:HUqm5LUf0
すでに泣いた

141 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 01:19:28.47 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 ――ああ。

 そうだ。

 そういう人たちだった。

 なにを、私は期待していたのだろう。
 
 駄目だ。

 こんなものに意味はない。

「斎藤。
 この賞状とトロフィー。捨てておいて」

 あの人たちは、私の両親なんかじゃあない。

「ごめんね……」

 どうして私は、報われないのだろう――。

142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 01:20:47.78 ID:t3sEHSD+O
しえん

143 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 01:27:17.44 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 部屋に入ってすぐに、ベッドに体を放り投げた。
 くだらない。
 コンビニではしゃいで、普通の女の子になった気でいて。
 それでも、私は琴吹の娘なのだ。
 
 憎い。
 
 この血が憎い。

 でも、なにができる?

 なにもできないじゃないか。

 私は、結局は琴吹の人形でしか生きられない。
 琴吹グループがあるから、私は生きていられる。
 食事も、衣類も、住むところも、なにもかも与えられてきた。
 私は、なにも生みだしてなどいなかったのだ。
 それなのに私は――私は――!

「一番馬鹿だったのは、私だ――」

 その日、私は枕を濡らして眠った。

 15年生きてきてそれは初めてのことだった。

 一度でも、希望を持ってしまった報いなのだろう。

144 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 01:35:20.22 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 カーテンから、朝日が差し込む。
 ……いつのまにか、眠ってしまったのだろうか。
 目はすっきりとしているのに、気持ちは陰鬱だ。
 着替えずに、シャワーも浴びずに眠ったためか眠りが浅い。
 身体は、まったく休めていない証拠だ。
 上着と下着を脱いでシャワーを浴びようと立ち上がる。
 母のピアノが、どうしても厭なものに見えた。

「――」

 希望は、持たないといけない。
 そう、人はいう。
 それを裏切られた時にどんな気持ちになるかなんて考えない。
 だって。
 考えてしまうと、動けなくなってしまうから。
 シャワーの湯が白い肌に弾かれる。
 両親にとって、私という存在はこの弾かれて排水される水のような存在だったのだろう。

 それならそれでいい。
 もう、希望を持たずに済むから。

145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 01:40:16.01 ID:fkpH7GOP0
ムギーーーー俺だーーーーー結婚してくれーーーー

146 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 01:42:14.39 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 シャワーからあがると、斎藤が息詰まった表情をして立っていた。

 こんな顔、今まで見たことがない。
 どんな時でも冷静だった斎藤が、明らかに取り乱している。
 私の姿、下着姿の私にもなにも言わない。
 ただ、急いで出かける準備をしてほしいとだけ。

 部屋からも出ない。
 とにかく、落ち着かない。
 私を時折見ては時計を見る。
 そんな繰り返しを5回ほど続ける。

「どうしたの?」

「……奥さまが」

 ――母が?
 なにかあったのだろうか。興味はないけれど。

「交通事故にあわれまして、現在意識不明ということです。
 ですから、急いで病院へと向かいます。よろしいですか?」

 反論なんてしない。
 琴吹の娘として、いかなければならない。

 母が、どんな人なのかを見てみたい。
 不謹慎ながら、そんなことを考えてしまった。

147 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 01:52:45.03 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

interlude

「これはひどいですな」 

「でしょう? 中型トラックにぶつかって内臓破裂。全身骨折。出血多量。即死じゃないのが不思議
ですよ」

 薄暗い白い部屋にいるのは二人の男。
 一人は白衣を着ている。どうやら、医者のようだ。医者はハンカチで汗を拭きながら、レントゲ
ン写真をもう一人の男に見せ、説明している。
 もう一人の男は、黒いコートを着ている。
 冬だから、寒いからだろうと予想できるが。どうやらこの男。夏であっても南国であっても、この
コートを脱がないのである。
 白髪と黒髪、ツギハギだらけの顔。黒いコート。彼を変人だと思わせるには、十分すぎる条件
が揃っている。
 
――というより、実際彼は変人なのである。
 
通称『ブラック・ジャック』は、このナリであるながらも医者であるのだから。
 医者といっても、正当なものではない。いわゆる、無免許医だ。
 無免許なのだが、腕は世界一と言っていいほどなのだから始末が悪い。警察の調べにも、
毎回潜り抜けてしまっている。
 今回、彼がこの桜中央病院にいたのも、一人の心臓病患者を手術するためだったのだ。手術
料は『一億円』。法外といっても余りある金額である。

148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 01:53:44.85 ID:lIyreAlI0
おい


おい

149 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 01:53:59.25 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「ただし、この患者(クランケ)には、ちと金を払っていただくことになりますがね」

「ブラックジャック! お前はまた患者から――!」

「おっと、先生さん。人の命っていうのはカネよりも重いんだ。命のために、なんとかしようっ
て人間が、私は好きでね」

 レントゲンの端には患者の名前。
 琴吹。
 その字を見て、ブラックジャックはにやりと嗤った。

「いいでしょういいでしょう。私が勝手にやらせていただきますよ」

椅子から立ち上がった黒い影は、死にかけの病室へと消えていった。

interlude out

150 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 01:55:39.73 ID:djnFapgm0
つづき

151 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 02:01:16.85 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

――病院へは家から20分程度だ。
 だが、私にとってそれは永遠にも感じられた。
 
 母が意識不明?
 それはいつ?
 昨日? 今日?

 なにもわからない。
 ただ、私は走っていた。
 会った覚えのない母の為に、私は知らぬ間に走っていた。
 病室『3402』号室。

「おまえさん。面会謝絶の字が見えなかったのかい?」

「――あなたは!?」

 長身だが、顔はツギハギだらけで白髪と黒髪がミックスした髪。まるで死神のような
男が、そこに立っていた。

152 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 02:02:52.09 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「私かい? 私はブラックジャック。この患者の主治医と言ってもいい。
 もしかして、おまえさんは琴吹の娘さんか?」

「はい。私が、琴吹紬です」

「そうか。
 ならいい。母親のそばにいてやればいい。でもね、このお人は今夜には死ぬ」

 ブラックジャック医師から出た言葉。
 死。
 それは、冷たいもの。
 当たり前のように、彼は言った。

「――お母さん」

 そうして、私は初めて母の顔をしっかりと目にした。

153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 02:03:30.93 ID:wnNCkbwJO
BJか

154 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 02:08:41.56 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 私が見た母は、半分死んでいた。

 呼吸なんて、本当に虫程度で体中にギブスが嵌められていた。
 もう、それは人の形ではない。
 少なくとも、こんな状態ではすぐに人としての生涯を終えてしまうだろう。
 そんなことは、医学のいろはも知らない私にもわかった。

「恐いかい?」

「――」

「おふくろさんは、今、8割死んでいる。故に、これから手術を行うのだが――そのために君か
君のおやじさんに言ってもらいたい言葉がある」

「……なんですか?」

「それは――」

 ブラックジャック医師が口を開いたその瞬間。
 病室の扉があき、スーツ姿の男が入ってきた。
 眉の太い、背の高い男性だ。

「……貴方が、ブラックジャックですか。悪評高いモグリ医師の」

 声を聞いて理解した。
 この人が、私の父親だということを。

155 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 02:15:54.43 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「悪評高い。それは褒め言葉ですかい?」

「そう聞こえるのならそう捉えるがいいさ。
 とにかく――あなたに妻を触らせることはない!」

「え?」

 父の言うことが、理解できない。
 ブラックジャックのことならば、私も知っている。
 法外な手術料をとり、医師免許も持たない。
 それ故に、医師の間では悪魔と罵られていること。
 だが、その腕前は神の如く。
 治せないものはない、と評される医師だというのだ。
 そのブラックジャックが診ているということは、母は助かるかもしれないのだ。それな
のに、そのチャンスを、どうして父はフイにしようとしているのだろうか。
 理解が、できない。

「そうですか。なら、そうさせていただきましょうか」

「ああ。出ていってくれ。この病院には名医の山本先生がいるんだ。私はその先生に頼む」

「クク……。その山本先生ってのが私に頼んできたんですがね」

 そういって、ブラックジャックは母を一瞥して、コートを羽織って出ていった。

 残された私と父は、母を眺めることしかできないのだ。

156 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 02:16:30.25 ID:0bcT6A0rO
普通におもしろいんだけど。ムギ好き俺大歓喜♪しえ

157 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 02:23:52.18 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「どうして……」

 声が、漏れる。
 ため込んでいた、不満が。
 抑え込んでいた、感情が。

「どうして、貴方はいつも利己的なんですか!」

「紬。子供が生意気を言うな。山本先生ならきっとなんとか――」

「違う! 貴方はお母さんの命ではなくお金を取った! ブラックジャック先生が、お金を
たくさんとるから、それに怯えて――なんのための琴吹の金なんですか!?」

「紬!」

「いつだってそう! 貴方は、私がコンクールで大賞を取ったことも知らないんでしょう!」

「――!」

 父の手が上がる。

 ――叩かれる。

 そう、覚悟した。

158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 02:30:30.14 ID:H2v/LcGN0
ほらBJなんか出すから

159 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 02:31:00.69 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「……畜生!」

 父がゴミ箱を蹴る。
 彼は、結局私を殴ることができなかったのだ。
 親は、子供を撫でてやった分だけ叱ることができる。
 叱ることしかしない親など、虐待と変わらない。
 いつかは子供が擦り切れてしまう。
 それを、父は本能的に察したのだろう。

「お父さん。
 ――私が、ブラックジャック先生に頼んできます」

「子供に、なにができる」

「もう子供ではいたくない!
 私は――私は、琴吹財閥12代目当主。『琴吹紬』です!」

 走りだした。
 母が、持ちこたえられるまでの時間はわからない。
 だから――私は走った。

「ブラックジャック先生!!」

「……決めたかい? お嬢さん」

 冷たい中に、温かい笑顔がそこにある。

160 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 02:34:28.33 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「ええ、決めました。母を、お願いします」

「そうか。よく決断したな。ただし、それ相応の金は貰うぞ。なんといっても、死にかけだ。そうだな
十億円だ。びた一文まけないね」

「――払います! いつか私が琴吹を背負う身になったら、十億円くらい――!
 だってそうでしょう? たった1人の母親の命ですもの! 十億円くらい安いものです!」



「――その言葉が聞きたかった」



 黒いマントは看護師に指示を出す。
 その瞬間、この病院が一気に騒がしくなる。

 母は手術室へと運ばれ、手術中のランプがともる。

「お父さん。私、決めました。私が、大人になったら絶対に子供にさびしい思いはさせません」

「……そうか。私たちのようにならないように、してくれよ」

「はい」

 ――それから22時間もの間。手術室のランプはともっていた。
 その間、私と父は今までのことを話していた。

161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 02:44:48.92 ID:lhVUWusTO
支援

162 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 02:49:26.55 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 それからの話になるが、母は命を吹き返した。
 
 そして、今日はブラックジャック医師の診察の日だ。

「……よし。順調に回復している。ただ、まだ動いたりはできないうえに苦しいリハビリがある。
それに耐えられるように頑張らないといけませんな」

「大丈夫ですよ。私が傍にいますから」

「そうですか。それなら安心だ。ところで、支払いの件なのだが。いかんせん私は気が短いの
でね。会計はできるだけ早くにしたいのだよ」

「で、でも今は――」

「君は、以前ピアノのコンクールで賞を取ったと聞いた。
 その賞状とトロフィーを譲ってくれ」

 ……絶句した。
 ブラックジャックは、法外な手術料を請求して、なお且つ必ず支払わせている。その彼が、
どうしてコンクールの賞状とトロフィーなんていう下らないもので――

「理由を知りたいかい? 未来の琴吹財閥当主が、中学生のころにとったコンクールの賞状
なんて、いい値打ちになると思わないか?」

 そんな理由。
 確証のない、後付けじみた理由。
 それでいいんですか、と問う。
 それでいいんだ、と答えられる。

163 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 02:51:23.73 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「でも――」

 あの日、私は斎藤に捨てろと命じた。
 斎藤は私の指示に従ってきた。
 故に、今回も――

「紬お嬢様。これを――」

「え?」

 私の手に握られていたのは賞状のケース。
 それと、あの日受け取ったトロフィーだった。

「斎藤――」

「申し訳ありません。命に背きました。どうかなんなりと処罰を――」

 涙が、溢れる。
 どうしてだろう。
 母がいて、父がいる。
 斎藤もいる。
 嬉しい筈なのに……。

「わかりました。では斎藤……。ずっと、私の執事でいてください」 

164 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 02:59:53.20 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「今回は、紬に教えられたよ。
 いいや、私は君になにも教えてあげられなかったな」

 病院近くのファミリーレストランで父と食事をする。
 ブラックジャック先生の診察の日は、決まってこれだ。
 ハンバーグ海老フライを口に運ぶと、父がそんなことを言ってきた。

「私は、お父さんとお母さんから何も教えてはもらえませんでした。
 身を守る手段も、音楽も、勉強も――なにもかも、斎藤に教えてもらいましたから」

 ドリンクバーから持ってきたメロンソーダで喉を潤す。
 ……そうだ。私にとって、親というのは斎藤だったのだ。
 私を守ってくれた。
 私を助けてくれた。
 私を見ていてくれた。
 彼がいなければ、私はきっと死んでいただろう。

「でも……。家族と命はお父さんとお母さん、それとブラックジャック先生に教わりました。
 このまま、距離を取ったままでもいいけれど、出来るなら……たまには食事を一緒にしたいです」

「……そう、だな。なんとかするよ。可愛い『娘』の頼みだからな」

「琴吹紬ではなくて、紬としてのお願いです」

「紬……。お母さんの怪我が治ったら、三人でここに来ような」

 ――それが、1月のこと。
 高校進学をどうするか。それを、私は考えていた。

165 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 03:04:24.30 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

「それで、琴吹さんは他の高校に行きたいのね?」

「はい。私は、もうお人形ではありませんから」

「……そう。でも、もう願書の提出をしなきゃならないの。どの学校がいい?」



「私は普通の女の子になれる学校に行きたいです!」


 それが――私が桜高に来た理由。
 電車通学をしたい。
 バイトをしたい。
 部活をしたい。
 友達と遊びたい。
 だから、私は――ここにいる。

166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 03:05:11.86 ID:JYSx7BAA0
斎藤はいつもイケジジだな

167 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 03:07:34.24 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

 ――永い。あまりにも永い昔話は終わった。
 口の中が乾いてしまった。
 紅茶を飲んで喉を潤す。

「ムギちゃん……」

「え?」

「私たち――親友だからな!」

「ムギ……今度一緒にアイス食べような!」

「私もです!」

「――ええ」

 ほんの少しだけ、予定は狂っちゃったけど。
 私は部活をしている。

 友達もできた。
 かけがえのない親友。

 バイトも始めた。
 憧れのファストフードのお店で。


 私は――普通の女の子になれたかな。

168 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/12/18(金) 03:11:11.14 ID:t3sEHSD+O
しえん

169 :笑み社 ◆myeDGGRPNQ :2009/12/18(金) 03:14:23.38 ID:FCAP4TGk0 ?2BP(2050)

Epilogue

「ねえお母さん! 今日のご飯はなに?」

「今日はハンバーグよ。柚(ゆず)の大好きな海老フライも一緒よ」

「でもお母さんは社長さんなんでしょ? 忙しくないの?」

「何言ってるの真(まこと)。お母さんは二人のお母さんなんだから、ご飯一緒に食べましょうね」

「そうだね! だって家族だもん!」

 大きなお屋敷。
 彼女の立場ならば家事なんて不要だ。
 だというのに、彼女は厨房に立って料理をする。
 我が子と一緒に、食事をするために。

 笑顔が溢れる、家庭が普通なのだから。

 彼女は、普通の女性になれたのだろうか。

 きっと、なれたに違いない。

 ――彼女はもう、お人形ではないのだ。



FIN
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続き読みてぇ
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  • URL 
  • 2009.12/18 10:00分 
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よかった
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  • URL 
  • 2009.12/18 16:54分 
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